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『紫色の月』
しんと静まり返った夜空にそんな色の月が浮かんでいたら、なんてロマンティックなことだろう。 ところが、札幌のススキノ街、夜の喧騒の只中にその紫の月『しづき』はある。
睦月、如月、弥生、卯月、皐月、水無月、文月、葉月、長月、神無月、霜月、師走・・・・・そして架空の13月。
「紫月(しづき)」
ここ、『しづき』は、実際には存在しない13月をイメージして、日常にない時間と空間で美味しい料理と、紫の酒(ワイン)、を楽しんでほしいとう思いで造られた店だ。
まるで、古文の一頁にありそうな美しい響きだと思った。そんな心憎い店名を授けられたお店は、さぞかし素敵なことだろうと楽しみにして店を訪れる。
一歩脚を踏み入れると、古風な名前とはうらはらに店内はモダンな雰囲気に包まれている。
船の客室のような丸い飾り窓、レンガ色に統一された土壁、柔らかな照明。
「お座敷ではなくて、洋風の雰囲気で料亭の和食を楽しめる店を」とのコンセプトで、4年前にあえてスキノのど真ん中のビルの7階にオープンした。 「ワイン、和牛、素材料理」の3つの食を基本に置きゆったりとした時間をすごしてほしいと言うのが『しづき』のスタイルだ。
厳選された和牛肉はフィレやサーロインのステーキのほか、牛タンの網焼、お刺身、握り、たたきなどで楽しめる。
「創作料理」とはよく耳にするが、「素材料理」とはどんなものだろう?
店長曰く、「私達が考える素材料理とは、自然の持ち味を損なうことなく、食材の本来の味や香を引き出した料理のことです。」 その「素材料理」は、旬を問わずいつも同じ味を楽しめるようにとの配慮から、あえてメニュー替をしない「定番」と、毎日20種類、その時々の旬の素材を贅沢に使った「旬」との二つに分けられる。
定番メニューでは生湯葉やふかひれを使ったもの、フォアグラやキャビアを和風にアレンジしたもの、またタレ焼きうなぎのご飯や、松葉かに雑炊などのごはんものもある。 一方、旬の食材としては、真タチを使ったものや、北海道産の鮮魚の刺身。また春の知らせを伝える山菜や貝類なども、これからが美味しくなってくる季節だ。
店のもうひとつの顔であるワインは、フランスを中心にニューワールドのものなど約130種類をストックし、赤、白、ロゼ、シャンパーニュの6種類をグラスで楽しむことも出来る。
しかし、ワインに限らずここでは東北を中心に厳選された日本酒や、九州の香り高い本格焼酎も並ぶ。つまり、どんな酒の好みの者同士が集まっても上質の選択肢が用意されているという訳だ。
和食をイタリアンやフレンチにアレンジする流行の店が多い中、ここ「しづき」はどこまでも和の味付けを大切にと、職人達が自慢の腕を振るう。 客層も落ち着いた雰囲気の人々が多く、男性客が目立つのもこの店の特徴だ。飲むことが目的の居酒屋ではなく、時間を楽しむために男性が集う店というのも貴重ではないか。もちろん、ワインの好きな大人の女性や、格式ばった料亭の雰囲気が苦手な若い人達でも、ここでなら純粋な和の料理を気楽に楽しめることが出来る。
時にはフレンチレストランではなく、カップルで和食を楽しむというのも、気が利いていてとてもお洒落だと思う。 都会の夜を照らす幻想的な紫の月明かりの下で、是非一度、しっとりとした夜を過ごしてみてはいかだろうか。
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