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米を炊く、寿司飯を作る、それを握り、寿司ダネをのせる。
お寿司の調理法は、考えるとシンプルなものだ。それなのにこんなに魅力的で奥深いのだろうか。。
『咲』のカウンターで働く職人を眺めながら、ついそんなことを思ってしまった。


「じゃあ、何か握りますか。。。」

北海道でとれたツブやホッキ、今が旬のタチやフグの白子空輸で各地から送られてくる色鮮やかな鮮魚。ショーケースは埋め尽くされている。 こういう時はお店に任せて一番美味しいものを握ってもらうことにした。

さりげなくネタの説明をして、世間話をしているが、包丁への集中力はちっとも乱されることが無い。 手と頭がまったく別々に生きているかのようだ。頃あいを見計らって、さっと次の一貫がおかれる。

いつ握ったのか気がつかないほどに流れが美しい。
この空間は何も隠すことができないのだなぁ。そう思うとつくづく寿司職人というのは度胸がいる仕事だなと思う。その集中力と緊張に慣れるには相当の熟練が必要なのだろう。失敗はゆるされない、言わば一発勝負のインプロヴィゼーション。厨房の中でこっそり手直しするなんてことも出来ないのだから、うーむ。なるほど・・・



口の中で程よくとける寿司

おっと、そんなことを思いながら眺めている間にも寿司は手際よく、すっすっと握られてていく。

さてさて、目の前に美味しそうなお寿司が並べられた。
小ぶりに握られた寿司飯が口の中で心地よくほどける。
それぞれのネタと程よく混じり、アっという間に口の中から消えてしまった。 どのネタを食べても、程よい余韻を残してはかなく無くなる。寿司は繊細なものだったなと改めて感じる。

いつのころからだろう、ネタが大きければ大きいほど喜ばれるようになったのは。 「それは、なんだか寂しいなぁ・・・」欧米人も憧れる寿司の繊細な美しさと技を日本人はもっと知るべきだと思った。

『フグは柔らかくほんのりとした甘みがあり、あっさりと塩でいただく。』
『イカには鳥の羽のように細かい包丁が入れられて、軽く炙られ美しい。』
『まぐろの赤身は醤油タレでヅケに。』
『きめ細やかな中トロはシャリにはんなりと寄り添うように上品だ。』
『アナゴは香ばしく焦げ目を付けて照りのあるタレで仕上げる。』

「ガリが美味しいですね」というと、ちょうど新ショウガを付けたものがあるからと言って、 美しく切りそろえられたそれを皿の端にさっと置いてくれた。 味覚がリセットさせ、次の料理に備えるべく登場するシャーベットのように、口の中がリフレッシュされる。

「自家製のかんぴょう煮で作ったかんぴょう巻きです。」と『咲』自慢の巻物がでてきた。
歯ごたえを残したて甘辛く煮含めたかんぴょうと、すりおろしたわさびのシンプルな組み合わせが新鮮な一品だった。 「失礼します。」の言葉にはっと横を向くと、熱々のお茶で満たされた湯飲みがサービスされた。寿司屋では最初の頃、お茶の出し方やガリの作り方から学ぶという。そういう一連の細やかな様式が寿司の奥深さなのかもしれない。



気楽な「回るお寿司」もいいが、もっと積極的に寿司屋に行こう。

店にもよるが、思っているほど敷居も値段も高くない。
ここでは季節を知ることができる、手間隙かけた食材への敬意を感じ、気の利いたサービスを知ることができる。美味しいものが食べられて、それを目のあたりに出来ることは、ものすごく儲けものだとちょっと贅沢な気分に浸ってしまった。

願わくば、このいい気持ちのままに店主の出身の美味しい栗山町の冷酒をクイっといきたいところだ。
車で来たのが口惜しい。。。

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