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STAND BY ME
2007年3月29日

彼女が初めて店に来たのは、夏だった。
女友達の定例飲み会があるらしく、雑誌をみてうちを選んでくれた。
5人の女性の飲み会、みんな美人なのだが一際目を引く存在であった。

僕が何に目をひかれたか、
彼女の美貌はもちろんあるがビールの飲みっぷりに心をくすぐられた。

泡まで美味しいモルツスーパープレミアム、注ぎ方にはスタッフ全員が自信を持っている。

薄く繊細な薄ピンクの唇に大胆に注ぎ込まれるビールはさぞかし幸せなのだろう。
乾杯のビールは二口で彼女の胃に注ぎ込まれる。
笑顔で呼ばれ「おかわりっ」の言葉に思わず「よろこんで!」と居酒屋の掛け声を出してしまう。

2杯3杯と胃に流れ込むビールは彼女の為に存在するのではないかと思わせる。

何回か店に来てくれるようになり、世間話も気軽にできるようになった頃、
彼女がお気に入りの究極の冷奴をつつきながら将来の夢について語りだした。
現在アパレルで働いている彼女は近い将来飲食店を経営したいらしい。

自分が行きたい店を作りたい。

田舎から出てきた彼女は、
一人の家に帰るのが寂しいらしく、思わず帰る前に飲み屋に寄ってしまうそうだ。
そんな時、お店に入ったら「お帰り!」と声をかけてもらえたら嬉しいと言う。

「そんな事を思っている人は少なくないんじゃない?
そんな店をやるんだ」と・・・・。

僕もかれこれ13年一人で暮らしていて
寂しくて泣いちゃいそうな夜もあったのを思い出す。


若かりし日、通っていた居酒屋があった。
お腹がすくとそこに行ってはご飯を食べさせてもらっていた。
休みの前の日はビールを出してくれ、
帰りにはおにぎりと玉子焼きを持たせてくれる優しい女将さんがいた。

休みの前の日の、「お疲れ様」の一言で出てくるビールが大好きだった。
彼女と話していてそんな事を思いだした。

美味しい料理を出す事だけが僕達の仕事じゃなく、
心休まる一言を差し出す事が僕達に出来る最高のサービスなんだな、と。

白い肌に赤みをおびた彼女の頬に見とれていたかったが、「行ってらっしゃい」と送り出した。

次に会う時には「おかえり」と笑顔で迎えいれよう。