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コラムインデックスPHOTO POEM>緩やかな傾斜

写真:葉っぱ

君の悲しみを

スローシャッターで切り取って

光の窓辺に置きたい

悲しみが色あせる

その日まで

緩やかな傾斜
2010年10月22日
2009年の女性バイクライダーのミーティングは帯広で行われた。
早めに集合場所に到着すると、すでに男前のMさん(女性)とEさんが来ていた。
Mさんは北海道の道の駅スタンプラリー全駅制覇を目指して二年目になる。
残すところ十勝のみとなり、今回でついに達成出来た。

親の介護をしながら限られた時間の中、
夜中に車を走らせ、道の駅駐車場で夜明けまで車中泊をし、
道の駅オープンとともにスタンプを押す。

そしてまた、介護や仕事の為、
急いで帰路につくのだ。

介護は経験者でなければ理解出来ないほど大変な事だろう。
介護が大変だという言葉の代わりに
「車の中で向かえる夜明けが素晴らしいよ」と言った。

刻々と変化する夜明けの空の色が、
張り詰めた心をゆるやかに傾斜させてくれる瞬間かもしれない。
だからこそまた介護の日常に戻れるのだろう。

Eさんを、バイクサークルの回覧ノートの写真で
初めて目にしたのは10数年前だった。

当時のEさんの所有バイクはKAWASAKIゼファー400。
スリムな体型に長い髪。黒の皮のつなぎに身を包み、美しく微笑んでいた。

そんな出で立ちは1968年に公開された映画、
マリアンヌ・フェイスフル主演「あの胸にもう一度」を彷彿させた。

そんなEさんが骨髄性白血病の病に倒れたのは11年前だった。
彼女は静かに語ってくれた。

数ヶ月の入院で運良くドナーが見つかり移植をして回復に向かったが、
その間受けた放射線治療の事や薬の副作用の苦しみなど。

その後、退院してからも幾つかの後遺症が残り、
共存しながらの日常生活をしている。

「まだバイクをあきらめたわけではない」
と聞いて、とても勇気をもらえた。

辛い経験は想像を絶するものだったろう。 しかしその壮絶さを感じさせないほど、
彼女は柔軟で落ち着きのある語り口は大人の女性を感じさせる。

落ち込んでいた私に
さりげなく話してくれたのは
彼女の優しさだろう。

困難を克服した彼女は、
初めて写真を見たあの時よりももっと深く、
揺るぎない瞳で美しく微笑んでいた。